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イヌイットアート展が異常に良かった。
イヌイットがアザラシや海鳥やシロクマを、黒や緑のやわらかい
石を彫って作ったやたらといとしく不気味な像だとか
サイケでガロ系な版画だとかが満載だった。

大人が描いた絵のはずだけどあまりに無邪気で無防備でちっとも写実的に描こうなんて思っておらず、かといってなにかの作意もみあたらず、狩って食べたりする動物や、襲ってくるかもしれない恐ろしいシロクマを、狩の道具の犬たちをあんなに可愛く描くなんて、イヌイットってどんな人たちなのか。

むかし、子供雑誌でコペル21っていうのがあってそのなかのイヌイットの暮らしをレポートした号が学級文庫にあったのでそれを繰り返し読んでときめいたことがあった。8歳くらいだと思うけどそのときは、カリブーと言う北極圏に住む鹿を、かれらが狩って、ひとつも無駄にすることなく利用するところが写真記事とともに記されていて、胃の内容物の、消化されかけた緑の苔を、殺してすぐに解体され切り分けられた、まだ温かな生肉につけて食べるところだとか、ホワイトチョコのような味のするという骨の髄だとか、ココアみたいに湯気を立ててマグカップに注がれる血だとか、とにかく猛烈に美味しそうでときめいた。

それが私のイヌイットの知識のほとんどだったけど、展覧会パンフを読んだところいまは、あんまりそういうことはしてないみたい。写真記事の中のココアみたいな血液を美味しそうに飲むイヌイットの女の子はたぶん、私とおんなじ年くらいだったからもう大人で三十歳も目前だけどもじゃあ、いまはどうしてるのかな。もう、ずいぶんまえから町で暮らしていてもうあんなご馳走を食べることも無いんだろうか。彼女がすごくうらやましかった。

割とマイナーな場所のビル二階にある鉱物ショップで、友達が鉱物標本をたくさん買っていた。青い大きい結晶から銀のアラザン様の粒がいくつも湧き出てるきれいな標本も買っていた。ブラックライトに当てると光るらしい。鉱物って楽しそう。

彼女も標本に散財して、わたしも服とかローストチキンとか猫のクリスマスプレゼントだとかを買って散財した。

あと、大学の先輩におしゃれ雑貨店でばったり出会った。すぐに名前がわからなかった。
優しくしてくれたことはいくつも思い出した。

こないだ買ったウサギの帽子から動物の匂いが立ちのぼる。
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