動物話がつづくけど
ゆめちゃんというのはモルモットで、私が小学二年のときの友達の
おばあちゃんが飼っていた。
今日、ロフトに行く用事があってペットコーナーをついでに見たら
モルモットがいて、それが「無理…無理やが…ブツブツ…」
と言う感じに聞こえる細い小さな可愛い声で鳴くから、はじめ
はそれの声だなんて少しも思わずにそれの下のケースに入
った地リスに夢中だったのだけれど、やっぱりなんか小さい
子供の声のような聞き取れない言葉が聞こえるような気がし
て見回してみてもインコは寝ているし、子供もいないし、なんだ
…と思ってみたらそのモルモットが私が身じろぎするたびに驚
いて彼の家の中に逃げ込み、その中で「無理…無理やが…」
とブツブツいっているのだった。たぶん意味もそんな感じだろうと
思えるような不安げで不満だらけの可哀相な声だけど、
それも含めて哀愁漂う可愛いやつだった。
それで
「ゆめちゃんは、そんなこと言っただろうか」
と、とうとつに20年ぶりくらいに思い出しもしなかった
ゆめちゃんのことを考えた。ゆめちゃんは、たぶんそんな
ことは言わなかったと思う。声を出さずにちぎった新聞紙の下でが
さがさしている顔の見えない毛玉が記憶の中のゆめちゃんで、
友達の名前も忘れてしまったし、おばあちゃんのうちと畑のあった
場所には今、巨大なタワーのような白いアンテナと白い四角い窓
の無い、謎の電波施設が建っていてそのいったいは立ち入り禁止
になった。
ロフトのモルモットにはちぎった新聞紙を掛けてあげたら安心すると
思う。
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